【MPSニュース】Growing Greener・持続可能な花き栽培と園芸業界の成長

本年、MPSジャパンでは毎月1回のペースで無料オンラインセミナー「MPS-ABCによるサステナブルな花き生産のすすめ」を開催しています。これは、MPS-ABC認証の仕組みや記録内容について解説するもので、認証への参加を検討されている方や自主的に取り組みたい方、花き生産の環境負荷について学びたい方に向けて行なっています。 さらに不定期に「特別回」を設け、通常回の内容に加えてMPSオランダ本部から世界の最新情報につい紹介してもらっています。ここでは3月18日に開催された特別回「Growing Greener(持続可能な花き栽培と園芸業界の成長)」の内容を簡単に紹介します。

世界が直面している課題

地球規模での気候変動の影響はますます大きくなり、世界各地で大規模な山火事や洪水・暴風雨、干ばつ被害地域の拡大など、極端な気象による問題が多発しています。昨年のヨーロッパ南部では、雨が降らず干ばつが続いた後、豪雨による洪水が発生しています そんな中、環境NGOなどの活動家による政府への気候変動・環境破壊への対策要求は強まり、最近では「花は世界を汚染している」と、花き業界もターゲットにされつつあります。

花き産業に対する批判

ヨーロッパやアメリカでは毎年、バレンタインデーや母の日などのイベントに合わせて、花き産業の持続可能性に疑問を投げかけるニュースの発信が増えています。本年も、アフリカ産のバラにEUで使用が認められていない農薬が残留しているという調査結果が公表され、産地での環境汚染や、農薬を散布する農場労働者と花を取り扱う小売店従業員の健康被害を不安視する声が上がっています。 他にも育苗や鉢物生産の培土に使用するピートモスの大量採取による自然破壊や、移民労働者の待遇と危険な労働環境など社会的側面への批判も多くあります。ネットや雑誌の記事が増えたため、テレビなどのマスメディアでも取り上げられるようになり、オランダやドイツのテレビ番組で非常に辛辣な報道がなされています。

造花業者の挑発的な広告宣伝

プラスチックやシルクで作られた造花は、これまで以上に精巧さが増しています。サブスクリプション契約で何度でも取り替えに応じるというビジネス形態をとる造花業者達は、自分たちはサステナブルなサービスを提供していると宣伝するようになっています。それは、水も世話も要らずゴミも出ない、何年間も鑑賞できる、という主張によるもので、「本物の花にように環境や社会に悪影響を及ぼさない」ことを売り文句にしています。 造花の普及率はまだまだ低く、本当に本物の花の代わりになるかも分かりませんが、花き業界に否定的なメッセージの発信源として注視しています。

サステナブルな消費行動の広がりと企業の積極的な取り組み

さまざまな報道によって、花き業界のサステナビリティに対する消費者の目はより厳しくなり、対策が必要になっています。 アフリカや中南米の輸出国からヨーロッパや北米の輸入国への花きの輸送では、空輸に伴う温室効果ガスの大量発生が指摘され、超低温保存による海上輸送への切り替えが始まっています。 オランダの多くの温室では肥料や農薬を含んだ水を回収し、再利用するシステムが導入されていますが、周辺の水質は思うように改善されておらず、まだ水循環システムを導入していない栽培への批判とともに、温室からの水漏れの可能性も指摘されています。 プラスチックの包装資材や過剰な包装は、消費者にとっての懸念事項となっています。イギリスではプラスチックの包装資材はすでに消費者に受け入れられなくなっており、紙などへ置き換えられています。 消費者からの要求の高まりに応じ、ホームセンターなどの小売業者は積極的にサステナビリティへの取り組みを行い、報告書による公表とともに広告宣伝に利用しています。米国の大手小売チェーンであるウォルマートでは、店舗に巣を作った野生のミツバチを駆除しないことを宣言し、生態系保護の取り組みとして宣伝しています。

ヨーロッパの花き業界へのMPSの貢献

花き生産の環境認証であるMPS-ABCは、認証生産者の環境負荷の大きさをA+、A、B、Cにランク分けしており、小売店が消費者にサステナブルな商品を紹介する際に利用しやすくなっています。ヨーロッパを中心とした花き小売業者のネットワーク「Fleurop」では、MPS-A+とMPS-Aランクの生産者が生産した花だけを使用した、「認証基準に基づいた最も環境負荷の少ないブーケ」を販売しています。 よりサステナブルな消費行動のためには、商品の生産と輸送における環境負荷の大きさを、分かりやすく視覚化して表示する方法が必要です。そのためには、CO2排出量のように環境負荷を数値化する、環境フットプリント手法の開発が求められています。MPSは現在EUの花き市場向けに、MPS-ABC認証で生産者が記録しているデータに幾らかの情報を追加するだけで、花き製品の環境フットプリントのEU標準手法「FloriPEFCR」に基づいた環境負荷を算出するシステム「HortiFootprint Calculator」を提供しています。さらに今後、世界中で環境フットプリントの利用促進をめざしてゆきます。