【MPSニュース】植物大好き!ECASジャパン西村社長コラム・花の育種方向
花や野菜の種苗会社は他社に比して優れた特性を持つ品種を作り出し、それをうまく販売することが使命です。日本でも毎年のように花の新品種が作出され、小売店でも販売されます。農林水産省農研機構の野菜花き研究部門が発表する「花が私たちのもとに届くまでの物語」というコラムを発表しており、新品種開発から生産、販売までの流れを分かりやすく挿絵にしています。
花が私たちのもとに届くまでの物語:aff2106_sugoroku.pdf
このコラムの中で花への関心が高く、嗜好性が多様な日本では、海外に比べて多くの品種が取り扱われているとあり、私も確かに日本では品種が多すぎる気がします。国内・海外育成品種のほとんど日本に集まっているのではないでしょうか。 残念ながら目新しいものが集まっても業界は活性化するどころか、むしろ減少傾向が続いているのです。これは姿形や花の色が従来にない新品種が世に出ても消費者の需要喚起に対しあまりプラスになっていない状況、種苗メーカー間の競争に過ぎないとう厳しい見方もできるかもしれません。野菜の新品種開発ではこの30年以上前から耐病性、耐候性育種が盛んに行われています。最近の異常気象下でも生育に優れる、収穫しやすいなどの栽培特性や、消費者の嗜好に合った姿形を追及するのはもちろん、現在最も大きな目標は耐病性の付与となっています。例としてトマトを挙げると、葉かび病、斑点病耐性、モザイクウィルスや萎凋病耐抵抗性など生産者が品種選択する目安として耐病性が前提条件となっています。農薬低減など環境への配慮という面もあり、野菜の種苗開発メーカーの耐病性育種技術は日々高度化されています。花の育種では低温期でも生長するペチュニア、キクの白さび病抵抗性、カーネーションの萎凋病抵抗性品種など開発がありますが、総じて花の病虫害抵抗性育種はかなり遅れていることは事実です。先にあげた農研機構による「花き類病害虫抵抗性育種の現状と今後の課題」という論文では、花の育種では「花色や花形などの観賞価値が優先となる」「花き産業規模が小さく研究勢力がわずか」「種類が多い、品種更新が早いこと」などを、開発が遅れる要因として挙げています。最後に花のガーデニング商材販売に際し、花の目新しさを誇るとだけでなく、その品種が持つ病害抵抗性や耐候性についての記述を増やしてほしいと願っています。切花類では当然生産者に対し、園芸店では消費者に対し、なにが有益情報なのかを私達業界人として再考していきたいと考えます。

