MPS-ABC環境認証
花き生産における環境負荷の程度と低減の取り組みを認証

MPS-ABCは花き生産者向けの環境認証としてFSI(花き持続可能性イニシアチブ)の要求レベルを満たした、いわば「環境に配慮した花き生産の国際標準」です。
GAP(農業生産工程管理)など他の認証規格でも要求事項に環境保全への取り組みがありますが、環境関連の法律や規制の遵守など最低限の活動にとどまる可能性があります。また、実際に生じた環境負荷の大きさを比較・検証することも困難です。
MPS-ABCは花きを含む農業生産活動の、環境面に特化した認証規格です。作物栽培で使用した農薬、肥料、燃料類などの環境負荷要因を記録し、四半期ごとに最新の記録に基づいて評価を行い、環境負荷の大きさをA+, A, B, Cのランクとして公表する、ユニークで分かりやすく、かつ信頼性の高い制度です。さらに、MPS-ABCは参加者に認証資格を与えるだけの制度ではなく、記録された使用量をグラフ等により可視化し、環境負荷を数値化して分かりやすく表示することで、環境保全や資源・コスト削減など農業生産活動の持続可能性の向上を支援するシステムです。
MPS-ABC認証は世界50カ国以上で3300以上の花き生産者が参加している国際認証です。世界各国の花き生産者が同じ基準を用いて環境負荷を評価し、改善に取り組むことで、花き業界のイメージ上昇と花き製品の価値向上に貢献しています。
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花き生産の環境負荷要因
作物の栽培には農薬や肥料などの生産資材が使用され、施設内を加温するための燃料や電力が消費されます。また植物の成長にとって水は必須であり、花きの栽培や加工の過程ではさまざまな廃棄物が生じます。これらが過剰に使用されていたり、適切に管理されていなかったりした場合、環境に対して余計な悪影響を与えてしまいます。

農業で使用される化学物質は合成物・天然由来を問わず、人間の健康および自然環境への影響について事前に評価され、安全な方法で用いられなければなりません。農薬は通常、決められた使用基準に従って使用されていますが、毒性が高い製品の使用や過剰な使用量、不適切な使用方法、まだ明らかではないが一部で不安視されている危険性など、人間や生態系に悪影響を及ぼす潜在的なリスクが存在しています。

化学肥料の原料は化石燃料や鉱物などの地下資源で、有機肥料は主に農業・畜産業・漁業の副産物や廃棄物です。どちらも有限な資源で、世界中で食糧生産のために争奪戦が行われています。つまり持続可能な農業では無駄な肥料を減らすことがとても重要です。また、農地に残った肥料は土壌中で分解して温室効果ガスを放出し、川や湖に流出すると飲料水の水質悪化の原因となり、富栄養化により生態系に悪影響を与えます。

石油やガスなどの化石燃料の利用による温室効果ガス排出量の削減は、地球温暖化とそれに伴う気候変動への対策として国際的な取り組みが行われています。農業生産ではビニールハウスや温室を加温するための重油や灯油の使用のほか、使用している電力の発電方式にも気を配り、総合的な省エネルギー・温室効果ガス排出削減の対策が必要です。

水(淡水)は人間の生存をはじめとして、農業、工業、その他生活や社会活動に不可欠な資源です。資源として最も利用価値が高く、それゆえ異なる用途の間で競合が起こりやすい水は飲用に供給されている水道水で、次は地下から汲み上げた井戸水、さらに川や湖沼の地表水と続きます。温室の屋根に降った雨水を集めて農業生産に利用すれば、他の水需要と競合することがなく水資源の保全に役立ちます。

農業生産では使い残しの農薬や空容器など、環境汚染につながる可能性がある化学物質を含んだ廃棄物が生じます。施設の被覆材やポット、トレー、コンテナなどのプラスチック類も、環境保全のため適切に廃棄しなければなりません。再生可能なプラスチックや紙のゴミは資源循環の観点からも重要です。茎や葉など植物の出荷する以外の部分である植物ゴミも、堆肥化して再利用することができます。
これらの環境負荷要因にはトレードオフの関係が存在します。例えば、完全密閉された植物工場では、病害虫の発生は少なく農薬の使用は少なく済みますが、一方、電力などのエネルギーは大量に消費されます。一つの環境負荷要因を取り上げて増減を見るだけではなく、すべての環境負荷要因をモニタリングし、全体としてより環境負荷の少ない花き生産へと改善を続ける必要があります。
生産者が取り組みやすく、消費者にわかりやすいしくみ

MPS-ABCは花き生産者と環境専門家により共同開発された、独自の環境認証プログラムです。参加者は基本的な認証ルールを守りながら、農薬、肥料、石油、電気などの使用量をオンライン記録し、MPSに報告します。MPSは世界中の参加者から報告されたデータをもとに、それらの使用量の基準値を決定します。このとき、栽培している作物の種類や、栽培場所の立地条件など、さまざまな情報が考慮されます。個々の参加者の農薬などの使用量は、それぞれの基準値をもとにポイントに換算されます。最後にポイントの合計から、その参加者の認証資格ランク(A+, A, B, C)が決定され、一般に公表されます。

MPS-ABCは外部の審査会社による審査が義務付けられている「第三者認証」です。審査員が参加者を訪問して行う審査の他に、栽培中の植物をサンプリングして残留農薬検査を行い、記録にない農薬が使用されていないかチェックしています。これらの審査によってMPSが発行する認証資格の信頼性が保証されています。
認証資格ランクの評価は四半期ごとに、年4回行われます。そのため販売業者や消費者は花き栽培時の環境負荷について、常に最新の情報を参照できます。MPS-ABC認証資格を有する生産者の花を取り扱うことで、栽培時の環境負荷に配慮しつつ、安心して花を販売し、楽しむことができます。
環境負荷の低減を効果的に支援します
●農薬を潜在的リスクで分類
人間への危害を含む、農薬の環境に対する悪影響は、農薬の有効成分としての使用量と、毒性などの有効成分自体の性質によって決まります。農薬の環境負荷を減らすためには、農薬全体の使用量を減らすとともに、環境への悪影響が大きいと考えられる(潜在的な環境リスクが高い)農薬を使用しないよう配慮が必要です。
MPS-ABCでは農薬などの化学物質(天然由来のものも含む)の潜在的な環境リスクを色分けして表示することで、参加者にそれぞれの農薬の情報を分かりやすく伝えています。これを「MPSの環境インジケーター」を意味する「MPS-MIND」と呼んでいます。MPS-MINDには農薬を使用する場所の立地要因、河川や地下水までの距離や圃場から農薬が流出する可能性なども考慮されています。参加者はMPS-MINDを参考に使用する農薬を選ぶことで、効果的に農薬によるリスクを減らすことができます。

●使用してはいけない農薬を独自に指定
農薬を管理する制度は国によって異なり、毒性が高いなどの理由からある国で使用禁止の農薬が、他の国では使用できることは珍しくありません。農薬に対する規制と監視が厳しい国では、外国から輸入された花には毒性の高い農薬が残留しており、フローリストや消費者の健康に悪影響を及ぼす可能性があると主張する声があり、花き業界のイメージを損ねる原因となっています。国際認証であるMPS-ABCでは、毒性や残留性が特に高い農薬や、すでに多くの国で使用が禁止されている農薬を、独自に「使用禁止化学物質」に指定しています。有効成分が使用禁止リストに載っている農薬は、その国では使用が許可されていても、MPS-ABC参加者は使用してはなりません。これによりMPS-ABC認証は花きの国際取引において、生産国に関わらず一律の農薬規制のもとで生産されたことの保証となっています。
●改善すべき点を分かりやすく表示
MPS-ABC参加者の専用画面では、最新の認証資格ランクの評価結果を見ることができます。そこでは農薬やエネルギーなどの環境負荷要因別に、参加者の達成程度が数値で示されています。この結果からどの項目で改善が必要かが一目で分かり、バランスよく環境負荷の低減を進めてゆくことができます。

参加者自身がオンライン記録した農薬、肥料、石油、電気などの使用量を参照することもできます。農薬ではMPS-MIND(環境リスク分類)別の、有効成分換算での使用量の一覧を見ることができます。これにより、使用した農薬の中で環境に悪影響を与える恐れが大きい製品が特定でき、それらの使用を減らして別の製品に切り替えることで、専門的な知識がなくても農薬の環境リスクを改善することができます。

さらに農薬、肥料、エネルギーの、年間使用量の推移を確認できます。年々使用量が減少または増加している原因を特定することで、さまざまな状況の変化に気付き、対応策を検討するきっかけになります。

MPS-ABC認証資格を取得するには
MPS-ABCへの参加申し込みや年会費などは関連資料をご確認ください。参加申し込みはGoogleフォームからも行えます。
MPSジャパン株式会社はオランダMPS財団から国内でのMPS認証の運用を一任されており、日本の花き生産者に合わせたコスト設定や認証ルールの解説を行なっています。さらに、オンライン記録の設定や操作方法のサポートや、農薬、肥料、エネルギーの使用を減らして環境負荷を低減するための技術的なサポートなどを、認証参加者の皆様に提供しています。
新規参加者がMPS-ABCの認証資格を取得するためには、1年間(MPS13期分、MPS1期は4週間)以上のオンライン記録と、審査員による初回審査が実施されている必要があります。もし、MPS-ABCで必要な各種使用量の記録が参加前から取ってある場合には、認証活動のスタート時に約半年分(28週間分)さかのぼって記録を開始することができ、認証資格取得までの期間を短縮することができます。ただし、それまでにMPS-ABCで使用が禁止されている農薬を使用していないことが条件となります。

関連資料
・環境認証MPS-ABCについて・MPS-ABC認証年会費
・参加申し込みフォーム(外部リンク)
・参加申し込み用紙(FAXによる申し込み用)
MPS-ABC参加者向け資料:
・MPS-ABC認証規格(第16.3版)
・MPS使用禁止化学物質リスト
・MPS禁止農薬(使用禁止化学物質を含む農薬)
・MPS-MINDについて
・カスタマーポータル・記録保持環境操作マニュアル
・MPSコード一覧;農薬(エクセルファイル)
・MPSコード一覧;肥料(エクセルファイル)
・2026年MPSカレンダー
・MPS-ABC使用量記録様式(オンライン記録の事前記録用)
・IPM・総合的病害虫管理計画フォーム
・クレーム対応記録フォーム
・MPS-ABC会社審査チェックリスト
・オランダMPS財団ホームページ(外部リンク)