【MPSニュース】オランダ最新情報:花き・観葉植物での農薬の影響と管理

MPSオンラインセミナー(8月・特別回)より
MPS ジャパンでは本年、無料オンラインセミナー「MPS-ABCによるサステナブルな花き⽣産のすすめ」を定期的に開催しています。これは、MPS-ABC認証の仕組みや記録内容について解説するもので、認証への参加を検討されている⽅や、花き⽣産の環境負荷について学びたい⽅に向けの内容になっています。さらに、不定期に「特別回」を開催し、MPSオランダ本部の協力のもと世界の花き産業に関する最新情報を紹介してもらっています。ここでは、8⽉20⽇に開催された特別回の内容を簡単に紹介します。
農薬使用に関する課題

花き・観葉植物の栽培では病害虫の被害を防ぐために農薬が使用されます。農薬使用時の生産者への安全性や、周囲の自然環境への安全性、さらに農薬を使用して生産した作物の消費者への安全性を確保するために、農薬は人や動植物に対する毒性について詳細に調べられています。それらのデータは農薬を安全に使用するために必要不可欠なのですが、一方、毒性データが明らかにされていることから、農薬を使うことに対する一般市民からの不安を招きやすいというジレンマが生じています。
農薬に対する反対運動や報道

花き・観葉植物での農薬使用に対しても、消費者団体や環境保護団体からの批判が起こっています。ヨーロッパでは毎年、バレンタインデーや母の日などの物日が近づくと、花の残留農薬について消費者の不安を煽るような報道が増加します。また、花の輸出国であるアフリカなどで、農場労働者が農薬による健康被害を受けているなど、人権問題として取り上げられるケースもあります。
花に農薬が残留することや、途上国で生産者の農薬事故が問題視されていることは事実ですが、花き生産者による農薬削減の取り組みや、農薬の安全使用を徹底するなどの努力が無視されています。このようなネガティブな報道はしだいに過激化するもので、放置していると花き・観葉植物の不買運動につながります。

もう一つの問題は、国や地域により農薬に対する規制が異なることです。食用作物では輸出先の基準に従って、使用する農薬や残留量に配慮する必要があり、それを怠ると産地としての信用を失うことになります。
花き・観葉植物に農薬の残留基準値はありませんが、前述の通りヨーロッパでは消費者団体等により残留農薬分析が行われることがあります。EUで使用が禁止されている農薬がアフリカ産の花から検出され、批判を招いたこともあります。花き・観葉植物の輸出で、輸出先の残留農薬に対する官民の監視状況を考慮すべきでしょう。
MPS認証での農薬の管理

MPS認証では、花き・観葉植物の栽培における農薬の問題点を以下のように整理しています。
・土壌や水の汚染と環境生物への悪影響により、生態系に被害を及ぼす
・生物多様性の維持に重要な、ミツバチなどの花粉媒介者に悪影響を与える
・農薬に暴露される生産者の健康被害
・農薬に対する監視と規制が強化され、出荷や取引の停止などの原因になる
・エコ消費の意識が強まり、栽培で農薬を使用しにくくなる

環境認証MPS-ABCは他のMPS認証の基本になっています。MPS-ABCでは「MPS使用禁止農薬」のリストを作成しており、このリストにある農薬は、参加者の国や地域で使用が認められていても、MPS認証参加者は使用することができません。
MPS使用禁止農薬は以下の観点で評価され、決定されています。
・土壌中や水中での分解が遅く、環境中に蓄積し汚染の原因になりやすい
・環境生物、特に花粉媒介者への影響が大きい
・人畜毒性が高く、生産者の健康被害を引き起こしやすい

このMPS使用禁止農薬は、他のMPS認証、適正な農場管理の認証「MPS-GAP」や、社会的責任の認証「MPS-SQ」でも適用されます。つまり、MPS認証資格を有する生産者はすべて、世界中で最も厳しい農薬規制のレベルで花きを生産しています。

MPS-ABC認証では使用禁止農薬による強制だけではなく、参加者の自主的な農薬削減をサポートする機能が備わっています。
MPS-ABCでは環境負荷低減のテーマとして「農薬」「肥料」「エネルギー」「水」「廃棄物」「認定された種苗」の6つを設定しており、参加者の使用と対応の状況を評価して得点化しています。これにより、参加者は自身の生産管理において改善すべき点が明確になります。

認証参加者専用のホームページでは、自身の農薬と肥料、エネルギーの使用量がグラフ表示され、世界全体のMPS認証参加者のデータから計算された「基準値」も表示されます。そのため、同じように花き・観葉植物の生産を行っている人々と、自分との使用量の違いがはっきりし、削減の可能性を知ることができます。
同様に、自身の使用量の経年変化もグラフで確認することができます。ここで農薬使用量の増減傾向を確認し、日々の栽培管理の見直しを図ることができます。
より農薬にフォーカスした認証サービス

オランダを中心としたヨーロッパでは、MPSはより農薬にフォーカスした特別な認証サービスを提供しています(日本国内では未対応)。
ひとつはMPS-ProductProof(使用農薬の保証)です。これは花き小売店に対してMPS-ABC認証の追加サービスとして提供されるもので、小売店が使用して欲しくない農薬をMPS使用禁止農薬のリストに追加するものです。さらに認証参加者に対する残量農薬検査などのチェックを強化して、小売店が望まない農薬が使用されていない・残留していないことを保証するものです。ヨーロッパではミツバチへの悪影響が少しでもありそうな農薬の使用を禁止して、生物多様性に配慮した花として仕入れるために利用されています。

もうひとつは天敵などの生物農薬を活用した、安全性に優れた病害虫対策を行なっていることを示す、MPS-GreenerGrown(より自然に配慮した生産)です。これは、化学合成農薬の中でも安全なものを最低限使用する「レベル1」から始まり、化学合成農薬を全廃する「レベル2」、さらに天然由来の抽出物なども使用も止め、完全に生物を利用した病害虫防除に成功した「レベル3」へと、生産者自らの努力により化学農薬への依存を減らしてゆくことを促進させるものです。
MPS-GreenerGrownは新しいサービスで、ヨーロッパでも数人の生産者が取り組みを始めたところです。

